私の親父

うちの親父は92歳になる。至って元気である。



最近1人歩きが難しくなってきた。何でも自分でやりたがる性格なので自分で動けないと
凄くストレスが溜まるみたいで弱っていた。
そこで家の中で使える手押し台を買うと喜んで使い出した。
ゴロゴロ、ガッツーン、ゴロゴロ・・・。(ガッツーンは壁や柱に手押し台が当たった時)
家の中で動き回っている時はゴロゴロと音がするのでよく判る。
これはいいや。??(゚◇゚ノ)ノ



自分が27歳の時(親父が65歳)に母親が亡くなった。
肝臓癌で肥大した箇所から大出血し亡くなった。
この後、親父は気が抜けてしまって精気が抜けてしまった。
自分が実業団のレースで何だかんだと週に2回程は日本CSCへ行っていた頃であった。
(私は何故か鈴鹿とかより日本CSCの方が走り易かったんですー。)
それを見ていた親父、「ワシも自転車に乗る」とか言い出す。



えーやるんかー?マジでー。
最初は適当な自転車で馴れてもらったけど直ぐに上達してきた。
「ワシにしょーもない自転車乗らすなー」とか文句を言い出す始末。
一緒に修善寺CSCレース、連れてきていたのだが徐々に目が肥えてきたみたい。
何度か誰かのお古をあてがっていたがソレも限界、親父も物欲は強い方でした。
知らない間に東淀川のイトーサイクル(自分が所属していたレーシングチームの店)で
エクターのアルミフレームと一式を購入し喜んで方々を走っていた。
当時は奈良市登美ヶ丘に住んでいたのだが知らない間にあちこち走り回る。
吉野なら入り口まで、和歌山は加太まで、滋賀県近江八幡まで、西の方は高見峠まで。
よく練習やと言って近所の山麓線(奈良県道30号御所香芝線)を走っていた。



胃腸の診断を受けて胃に癌が発見された。
手術をして異の殆どを摘出、かなりハードな手術だったが元来、頑健だった親父は
70歳前だったが手術に耐えて短期間で動き出せるようになる。
それまで少し太り気味だったのが胃が無くなって少量しか食事が出来なくなったが
体が絞れてきて軽量化、かえって良い具合に。
背中も両側に柱の様に背筋が浮き出てきて、これが70歳前の老人か?という具合。
自転車もアルミでは面白くないとLook_KG-166だったか176だったか。
メカは総デュラで当時自分は総シュパーブだったから張り合っているみたいな・・・。



暫くして今度は腸に癌が発見されて又手術。
頑健な親父にはそれも大して問題ではなく暫くすると又復活する。
まるでゴキブリの様な生命力であった。
そんな親父だが或る日、168号線を走っていて生駒_平群の辺りの踏切を渡っている時に
悪辣な車に当てられてレールの上に落車、したたかに腰を打ち付けて骨折した。
この時既に70歳をとうに越えていた。
流石に70歳半ばの老人にはキツかったみたいで、この事故を契機に自転車を降りた。
非常に残念がっていて自分も残念だったけど、それ以上は矢張り無理。
走りに力が抜けてきており真っ直ぐに走れない状態だった。



そんな親父だが未だに元気なのは日々、嬉しいものである。
時々、やかましい事を言うけど今やそれも愛嬌である。
不意にこけたり引っ繰り返ったりした時は自分で起きれないので手持ちの警報を
ビービーならして呼び付ける。
嫁様も医者に連れて行ったり薬や好きな食べ物を買いにいってくれる。
皆に守られて親父も安心しているかな。
家族を此処まで守ってくれた親父なんで何時までも健康で長生きをして欲しいですわ。